【解説・あらすじ】「さよなら歌舞伎町」「ヴァイブレータ」の廣木隆一監督が、出身地の福島に暮らす人びとを描いた処女小説を自身のメガホンにより映画化。仮設住宅で父と2人で暮らすみゆきは市役所に勤務しながら、週末は高速バスで渋谷に向かい、デリヘルのアルバイトをしている。父には東京の英会話教室に通っていると嘘をついている彼女は、月曜になるとまたいつもの市役所勤めの日常へと戻っていく。福島と渋谷、ふたつの都市を行き来する日々の繰り返しから何かを求め続けるみゆき、彼女を取り巻く未来の見えない日々を送る者たちが、もがきながらも光を探し続ける姿が描かれる。主人公みゆき役に「グレイトフルデッド」「日本で一番悪い奴ら」の瀧内公美。父親役の光石研のほか、高良健吾、柄本時生、篠原篤らが脇を固める。(映画.comより)
製作年:2017年
製作国:日本
監督、原作:廣木隆一
脚本:加藤正人
主題歌:meg
主なキャスト:瀧内公美、光石研、高良健吾、柄本時生、篠原篤、蓮佛美沙子、戸田昌宏、安藤玉恵、波岡一喜、麿赤兒、小篠恵奈、毎熊克哉、趣里
【感想】
東日本大震災から6年以上過ぎた今、もはや全国規模での報道は毎年3月11日に現地から福島の現状が申し訳程度に報告されるぐらいとなってしまいました。
あの震災が風化していくなんて当時は考えもしませんでしたが、毎年大きな自然災害が起きる現実の中、もはや風化は避けられない事実となってきましたね、おそらく福島県内ですら正直震災に関しては毎年地域によって温度差が開きつつあるのが実際のところなのではないでしょうかね?
今現地がどうなっているのか、正直私にはよく分かりません、もうかなり早い段階から前に向かって進んでいる者もいれば、いまだ前に進めずもがき苦しんでいる方も多くいらっしゃるのでしょうか・・・でも間違いなく言えるのは、癒えることのない喪失感、そして満たされぬ思いを心のどこかに抱えて生きていると言うことでしょう、あれだけのことが起きた訳ですから、そう簡単に消し去ることなんて出来ないのが当然です、そんな心情を見事に表現したこの作品は、本当に素晴らしかったと思いましたよ、まさしくこれこそ映画でしか表現できない震災へのアプローチだったのではないでしょうか。
これは福島出身の廣木隆一監督だったからこそ表現できた作品なんでしょうね、簡単には語れない、心の闇・・・主人公みゆきが何故市役所に勤務しながら週末は東京でデリヘリ嬢をしているのか、その答えを明確に示さない辺り、その重さが逆に伝わってきて、何気に素晴らしかったと思いました。
自分を傷つけたかった?生を実感したかった?ただ現実逃避したかった?お金に困窮してた?そんな言葉では簡単に量ることのできない心模様が、瀧内公美の演技からグッと伝わってくるものがあって、終始彼女の演技に魅せられてしまいました、心の渇き、迷い、様々な感情が伝わってきて、見てたら何だか泣けてきました。
彼女だけじゃなく、周辺の人物の描き方も秀逸でしたね、光石研が演じたみゆきの父親や柄本時生が演じた市役所職員が特に印象に残りましたが、まあ結局、誰の人生も間違いでは無いんですよね。
ただ震災で人生を狂わされただけ、ホント不条理だ、これは震災に限ったことでは無く、様々な状況で起こりうることだけに、誰の心にも響く物語になっていたのではないでしょうか。
そこでどう折り合いをつけ生きていくのか、その描き方が本当に素晴らしかった、そして光石研の演技には泣かされたなぁ~。
劇中のようにちょっとした言葉で人の心を傷つけそうで、そう簡単には語れない題材ではありますが、何か明日に向かって歩きだせる、きっかけとなるような希望の光が被災者全ての方に降り注いで欲しいなと心から願ってやみません。
そんな意味合いも含めた、終盤の映像は本当に素晴らしい映像描写でしたね、高速バスの中のシーンとか、とにかく映像表現が秀逸な作品でした。
まあとにかく重いテーマの映画でしたけど、どこか心が満たされないまま生きている方(私も含めて大半の方がそうかもですが)の心には、きっと刺さる作品になっていたのではないでしょうか。
評価4.5(5点満点中)
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